もう10年にもなるだろうか。ビリー・ジョエルがインストゥルメンタルのクラシック音楽を書くようになってから。あの「ピアノマン」はすっかりロマン主義になり、どんな場面にも合う叙情豊かな短編を作るようになったことが、このアルバムから聴き取れる。彼の作曲したソロ・ピアノの10曲にはシューマンやショパンの影響が少なからず見られるが、ジョエル自身ははっきりと自分の色を出そうとしたのではないだろうか。彼がもっている本来の個性を。
バカにする批評家もいるかもしれないが、これは立派なデビューだ。キャッチーなポップスのメロディーを盛り込んだクラシックへのクロスオーバーではなく、新しく作られたピアノ曲をリチャード・ジョーが手堅く演奏し、それを録音した魅力的なひとつの作品なのだ。ジョエルはポップスのときと同様、流行の最先端を追い求めたり人間の心理をくどくどと説明したりしない(11分におよぶ”Soliloquy, Op.1″はちょっと長すぎだと思うが)。だからこそいつまでも心地よく聴けるクラシックアルバムに仕上がったのだろう(ポール・マッカトニーや他のポップスターが書いた最近のクラシックもどきの作品とは比べものにならないほどよくできている)。(Amazon.com, Jason Verlinde)
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